ぴょんが教えてくれたこと

我が家の番犬ぴょんは3本足だ。
子犬の時から落ち着きがなかった彼女は、土手をかけあがって西鉄電車接触し、後ろ左足をなくした。
獣医さんから、”後ろ足で良かった、ちゃんと歩けますよ、負荷がかからないよう体重には気をつけてくださいね”と言われた。
足が一本なくても本犬的にはなんの問題もなく、山登りにも海にも川遊びにもキャンプにもどんどん連れて行った。


ぴょんの足を見た人たちはいろんな反応をする。
『あら、足がない!!えー!えー!どうしたのー?うんまあ〜』
『えらいねー、えらいねー、ほら僕たちもがんばって歩かなくっちゃね』
足のないことにはっと気づいても何も言わず、ただただ『可愛いねー可愛いねー』と優しくなで続けてくれた、美しい親子連れもいたかと思えば、
『ほら車道を歩くとあんなふうになっちゃうよ、かたわになってもいいの?』と自分の犬に言い聞かせるおばさんもいた。



忘れられない出会いがある。

ぴょんを連れて久住登山をしたとき、私よりもちょっと年上のクロスカントリーの格好をして颯爽と歩いているスリムな女性が声をかけてきた。
事故でこうなったというと、つかず離れず一緒にぴょんと登っていく。
人で賑わう頂上直下で昼食を食べ下っていると、またぴょんと後になり先になり一緒に下る。
彼女は一人ではなく福岡に単身赴任しているご主人と来ていたのだが、いかにも山登りは不慣れなご主人をところどころで待ちながらの道行きだった。
最後の休憩場所のところで、
『私ね、こーんなに太っていたのよ。信じられないでしょ。震災でね、人生観が全部変わったの・・・』
両手を広げてクスッと笑う。
『ぴょんというのね、ぴょん、ありがとう。今日はたくさんたくさん勇気もらった。』
と優しくぴょんをなで、遅れてきたご主人と山をくだっていった。
ちょうど阪神大震災の何年か後くらいだったと思う。
どんなことが彼女にあったのか、聞かなかった、いや聞けなかった。



日曜夜、NHKで『東北 夏祭り 〜鎮魂と絆と〜』を見た。相方と二人、涙が止まらなかった。
『慟哭』という言葉がある。どんなに時間が経っても癒されない悲しみ。


震災に遭わなかった私たちにできること。ずっとずっと考え続けていた。
今でも義援金の募金を続ける小さなお店がある。被災した写真の修復をしている人がいる。避難してきた人の話し相手になる人もいる。ボランティアの人(自衛隊の方も含めて)をマッサージし続けるひともいる。福島や岩手の特産物を買う人もいる。
小さくてもわずかでも自分ができることを長く続けること、忘れずこころを寄せること。



いまだ、街が再生できるかわからないがれきのままの状態。でもいつかきっと・・・・・そう思いたい。