666

30年あまり探し続けたCDがある。
高校生の頃、音楽好きの友達から預かったテープ(CDじゃなくカセットテープ)に収録されたアルバムで、題名・歌手名を覚えていなかったがために(このへんがマヌケ)30年もの歳月をかけて探すはめになった。覚えられなかった理由として、ギリシャのバンドだったことと、666という数字がタイトルであったのにもかかわらず、999と間違って覚えてしまったのにも原因がある(輪をかけてさらにマヌケ)。
ネットが普及して、何が一番嬉しかったって、このアルバムを探し当て購入できたときは、ネットさまさまだーと感激したものだ。

『666〜アフロデティス・チャイルドの不思議な世界〜』。

新約聖書ヨハネの黙示録をモチーフにしたタイトル通り不思議な音楽で、ヴァンゲリスという人が全作曲した。後から調べると、この人は、炎のランナーブレードランナー南極物語などのサウンドトラックを手がけ、今も活躍しているらしい。


収録曲の1つ、∞(無限大)でどっかの国では発禁になったと聞いたこともある。極限を表現している曲だが、女の人のあえぎ声が問題になったとか。ドラムの音のみをバックに、ギリシャ女優の迫真の唄とも叫びともいえない、狂気の極限を表現したこの曲は、ヴァンゲリスの才能そのもの。私にはトイレを我慢して我慢して極限まで我慢している様が思わずぴっと浮かんじゃう。狂気とは我慢して我慢して我慢した先にこぼれてしまってもたらされるものなのかもしれない。不思議で胸をつく音ばかりで、大事にしているアルバムの1つだ。


圧倒的な権力者の父を亡くしたキム・ジョンウンの顔をテレビで見ていたら、Lement(かなしみ)イスラム風の哀歌・・・この収録曲が聞こえてきて仕方がなかった。

『とても悲しい 人間はあまりに哀れだ とても悲しい 王はあまりに哀れだ お別れだ』


幼さのまだ残る後継者と言われる男の顔。我が身の保全ばかりをはかる醜悪な老人達の間でどう生きていくのだろう。どんな顔に変わっていくのだろう。