愛すべき街

うちの会社は博多区の一番南外れの下町にある。南福岡とも雑餉隈と呼ばれる地区だ。遠い昔太宰府政庁があったとき、太宰府へ向かう人々を対象とした店が連なっていた場所ともいい、太宰府の下級官吏の雑掌居があった場所だともいい、難読地名にあげられている。ちなみにざっしょのくまと読む。
福岡には○○隈という地名がいくつかあり、古代の遺跡、集落跡が必ずでる。JR南福岡駅をやりかえるときもなんかでてたし、すぐそばを古代官道がとおり、その向こうの丘陵は魏志倭人伝に出てくる奴国の丘があり(ここを邪馬台国だと主張するアマチュア歴史家もいる)、ちょっといけば最古の水田耕作地跡板付遺跡も目と鼻の先だ。よくよく考えてみると筋金入りの下町かもしれない。


下町には必ずある商店街・・ここから、かの龍馬伝に出演中の武田鉄矢さんの実家(たばこ店)はすぐ近く(今はもうなくなった)、商店街の盆祭りには鉄矢さんも舌をまく芸達者のおいちゃん、おばちゃんがたくさんいたそうな。福岡出身の芸能人って多いが、昔から大陸から渡ってくる人たちを饗応してきた血によるものなのか、おもてなし上手というか喜ばせ上手というか、真ん中でパフォーマンスをさらりとやってのける人が多い・・・・




カメラの調子が悪くて、商店街のはずれにあるうえの写真場に相談にのってもらっているのだが、応対するのは80過ぎのじっちゃん。いろいろと話しているうちに、『もしかして上野彦馬の親戚筋なんですか?』と聞くと、『う〜ん、彦馬さんとは話したことないのう』って時代が全然ちがうじゃん、彦馬さんって呼ぶほど親しかったんかいとツッコミをいれたくなるほど、おとぼけた返事。ここのじいちゃんを筆頭に80前後のじっちゃん、ばっちゃんが現役で店番に立っている店がいくつかあって、味わい深い接遇は近頃のわけえモン、見習ってほしいぐらいだ。

食事の店も下町ならではの外観はぼろだが、安くて美味くてというお店がいくつか。友達は焼き肉屋一福の霜降りランチ(880円だったけ)を月1回楽しみに食べにやってくる。まるで山賊の住処のようなもつ鍋屋も予約をいれないと入れないぐらい毎晩盛況だ。
いっときシャッター商店街になりかけたが、しぶとくじりじり盛り返してきている。たくましき商店街の人たち。だって筋金入りだもんね。

自慢を言うとうちの会社はソフトバンクの孫さんが初めて会社を起こした跡地に建っている小さいビルの中にある。(取材が2度ほど来た)超零細企業なのがちょっと恥ずかしいけどさっ。じーちゃん、ばーちゃんに負けないよう長く働きたいモンだ。