綾の森

プロ野球のキャンプが始まった。毎年、朝早くからたたき起こされてひきずられるように宮崎生目の森ホークスキャンプ場に連れて行かれる。ピだかペがかしらないが強力な外国人助っ人にわくわくの相方。『今年もすごいぞ〜〜』はいはい、半分寝ぼけ頭にピとかペがいかにすごいかを話されても、右から左へ抜けていく。

球磨川沿いの長いトンネルを抜け、人吉から県境を越え、えびのや都城を抜けると、宮崎市は春だった。菜の花が咲き、もうツバメが南国から飛来していた。そわそわの相方をキャンプ場で降ろし、独り東諸県郡綾町に向かう。九州山地の東裾に抱かれた照葉樹林の森で有名なところだ。3時に迎えに行く約束をし、森へGO!


照葉大吊り橋


長さ250メートル、高さ142メートル、歩くところは溝蓋で下が丸見えで、めちゃくちゃ怖い。吊り橋の先には、もりもりとした照葉樹林が広がっている。こわごわ手すりから手を離して、震える足で撮った綾南川。うっすら緑がかった美しい川だ。望遠で撮影したのでそれほど高度がないように見えるが、実際は高い。一瞬引き返そうかと思ったほどだ。



伐採を拒み、伐採でいっときの雇用を生むよりは、長い目で見た町の有り様を決意した綾町。《自然生態系を生かし育てる町にしよう》と町の憲章に定めた。九州の人間にとってはなじみ深い照葉樹林だが、実はどんどん減っている。
早春の明るい陽光を吸収して林の中はほわんと明るく、生き物の気配で溢れている。




下のかじか橋までくだり、駐車場までめぐる1時間の散策コースを歩く。(いやもうあの橋を引き返す勇気がなかった)枯れ葉の音と川の流れる音。鳥の声、そして風で葉がときどきざわめく。森の道を歩くのはいい。この時期の森の道は特にいい。猪とは遭遇しないように・・なんて思いながら、ぽてぽて歩く。



イスの木           カゴの木


ところどころ小動物のふんがおちていて、ヤマガラヒヨドリの鳴き声が行き交う。空気が甘くて胸一杯。来て好かった。
かじか橋から見上げた吊り橋。ありえない高さで空中に浮かんでいる。



川は不思議な碧とも緑ともいうような色。こんな色ってなんていうんだろう。川へ下る山道があったので降りてみる。



川面から白い湯気がところどころあがり、神秘的ですらある。



この川を渡って対岸にいけそうだったが、過去2度そういうことをして携帯をパーにしたことがあるので(カメラを濡らすわけにはいかない)、大人しく来た道を登り、かじか橋まで戻って橋を渡ることにした。どうも水に引き込まれるタチらしい。(岸壁から服着たまま落ちたこともあるのよ)



この川が流れてくる上流にはもっと深い森が広がり、さまざまな命が息づいているに違いない。素晴らしい森。



久しぶりの山歩きにゼーゼー。日頃の運動不足を嫌と言うほど知らされた。汗をじっくりかき、太ももがちょっとがくがく。トイレで着替えながら、う〜〜〜ん、気合い入れて歩かねば〜〜!!!と決意を新たにしたのだった。