踊るお馬さん

ホークスのキャンプ行きはいつも紅白戦が行われる後半に行くのだが、今年は鹿児島神宮の初午祭の鈴かけ馬踊りにあわせて、この日程となった。
初午祭とは、牛馬を初めとする家畜の安全・多産を祈るとともに、五穀豊穣、家内安全を祈り、厄(わざわい)を払うお祭りだ。全国にさきがけてここ鹿児島神宮で行われる初午祭は、戦国時代後期からの歴史をもち、旧薩摩藩都城、国分、加治木の村々から人馬一体となっての踊りを奉納する。国の無形民俗文化財に指定されている。


背中に桜の造花、小さな米俵、色とりどりの帯で飾られ、首には鈴。馬が動くたびに背中の花やのぼりが揺れ、ひたたれた色とりどりの布がふわっと遊び、じゃんじゃん鈴の音がする。破魔の音だ。



踊る馬のあとから、賑やかなお囃子とヨイサーヨイサーという掛け声にあわせて人が踊りながらついてくる。



太鼓、三味線、鉦そして唄、サンバというかマンボというか軽快なリズム。馬もちゃんと練習を積み、首を上下に振りながらステップを踏む。この加治木、木田の村落は、古くから薩摩藩の殿様の馬を育てて来た歴史ある集落で、この馬が一番に奉納踊りを努める。

 




『花は霧島、たばこは国分、燃えてあがるは桜島』とおはら節の一節から始まる鹿児島弁で唄われる鈴かけ馬踊りの唄は、『よかにせ、よかおごじょ』『桜島からよかよめじょをもろた』以外は、何をいっているのか聞き取れない。ただ横にいた鹿児島人と思われるおじさんがときどき、ふふふ、ふふふと含み笑いしていたので、おおらかな男女の恋の掛け合いの唄のようだ。
相方がビデオを撮っていたが、編集に時間がかかりそうなので、YOUTUBEから。

http://www.youtube.com/watch?v=49PjrA0aR84&feature=related



馬も小刻みに足を運んで、鈴を鳴らしながら踊る。



お馬さん、祭りが終わって普段の生活に戻ってからもついつい踊っちゃうそうだ。そのことを去年鹿児島神宮にきたときに資料館のおじさんから聞き、この踊るお馬さんに会いたくて会いたくて・・・。一生懸命踊るお馬さんもいれば、なんかぼーっとしたお馬さん、興奮気味のお馬さんもいて、それぞれの馬の表情に笑みがこぼれる。


宮崎県都城ではじゃんかん踊りという。じゃんかんとは鈴が鳴る音のこと。踊りの振りや囃子の調子がちょっとずつ違う。計24の団体が奉納踊りをつとめる。



こんな小さなお馬さんも。鼻先につけているのは、島津の十字家紋。



ポニーのきんたちゃんは、踊るだけでなくいななきまくってちょっと興奮気味。



人が馬に寄り添い、あるいは人にあわせて踊る馬。晴れやかに踊る人々、囃す人々、囲む人々。なんだか鼻の奥がつんとくる。



この祭りは確かに人々の晴れやかな祈りと喜びに満ち、こうして春をことほぎ一年の無事を祈ること、毎年この集まりに自分が存在することが、当たり前のようでいてとても尊い一瞬なのだと思う。



踊り手の男衆が飲むのは、もちろん生の焼酎か。さすが焼酎の里、みんな水のように飲み干す。



肩車されて一生懸命魅入るこの男の子も、鼻先を撫でる女の子もおっきくなったら祭りの担い手となってくれるだろうか?



この鹿児島神宮を皮切りに、馬踊り隊はそれぞれの集落の神社へ、近隣の集落へと破魔の鈴の音と賑やかな囃子とともに、春の使者として巡り歩いていく。