こけけツアー 〜神社編〜

日置市吹上町に鎮座する大汝牟遅神社。朝廷に奉仕していた阿多隼人の舎人が故郷に帰る際、大神神社の大汝牟遅命を勧請して創建されたという。



朱塗りの柱に龍の彫り物。



白い狛犬と水色の象。なんか東南アジア風だなあ。



樹齢千年と言われる大楠。




参道をくだると千本楠と呼ばれる神域がある。



千本あるわけではなく、実際は20数本だが、一歩足を踏み入れると空気が変わる。



太い枝が横に伸び、こけがびっしり。




この中にいると圧倒的な何かにとらえられたような感覚がしてくる。



余談だが、楠の葉や枝からとれる樟脳がかつて江戸時代初期から大正時代くらいまでの鹿児島県の特産品だったらしい。日本から輸出される樟脳の大部分をしめ、当時ヨーロッパでは医薬品(カンフル剤)として使用され、サツマカンフルといって珍重されたとのこと。。当然、楠には樟脳利権があったわけで、薩摩藩は1本1本厳格に管理されていたというから、大きな利益をもたらしていたのだろう。



指宿開聞岳の麓近くに鎮座する枚聞(ひらきき)神社。古名和多都美神社。薩摩一宮とある。あっれっ〜、薩摩一宮鹿児島神宮もそうだったんじゃなかったけ。



ご祭神はオオヒルメムチ。由緒書きにかっこして天照大神とあるが、たぶん違う神のような気がする。もっと古い原初的な海人族の神の匂いがする。
社殿はまるで龍の尾骨のようで、真っ直ぐに開聞岳に連なっている。開聞岳がご神体のようだ。



やっぱり柱に狛犬と象。この象さんの表情がなんとも。




龍がいないなあと探すと、神殿の奥深くに立派な龍柱が二柱あるらしい。青色に彩色された龍が巻き付いた立派な柱がほの暗い建物の中に見えた。


枚聞神社、ひらきき神社と読む。いろいろと謎を秘めた神社であるようだ。枚を「ひら」と読むのは、たとえば大阪の枚方にあるが、一枚、二枚と薄いものを数える時に使う。ひとひらの雪なんていうときの「ひら」はこの「ひら」なんだろうな。
祭神オオヒルメノムチは、自然界のわずかな兆候を聴く、あるいは感じる巫女ではなかったか?海を渡って琉球・沖縄では、国王おなり神を補佐し、斎場御嶽を掌握する最高位の神女を「聞得大君」という。ここのも「聞く」。何を聞いていたんだろうな?妄想が膨らむ。

さてもうひとつの謎、ここには天智天皇が祀られているという。天智天皇は確か片っぽの沓だけ残して、ある日突然行方不明になったと曰くが残る。遺体がみつからない、埋葬記録がない、で落ちていた沓の場所に墓をたてたと。まあ血なまぐさい事件を起こしたからね。その天智天皇がここに落ち延び70代まで余生をおくったという伝説が残る。
学会では一笑に付されたらしいが、和風諡は天命聞別尊(あめみことひらかすわけのみこと)「聞く」の字がはいり、后は、阿多の美しい娘だった。この娘にも興味深い伝説がまとわりつく(中臣鎌足が一枚かんでいるのよ)。なにより面白いのは、祭礼時に奏される神楽で、白足袋を片一方だけはいた男神が登場するのだという。


神社の横に、その神楽で使用される面が陳列してあったが、古さびて恐ろしいほどの迫力だった。



 



おおなむち神社といい、この枚聞神社といい、古い神、古い信仰の形が残っているような気がしてならない。九州の神社を回っていると、記紀からはみだす神、違う表情を見せる神がたくさん祀られている。まあ、たくさんの氏族の神話をつなぎあわせたものが記紀なので、矛盾だらけなのも仕方ない。八百万の神とは自然神のみならず数多くの氏族の神とその神話が古代あったということだろうと思う。古代妄想いと楽し。