第9

父と同じ歳の尊敬するあるじっさまから、『落ち込んだときにはね、自分を引き上げてくれる何かをぱっと10以上言えるようみつけとかないとだめだよ。』
10以上・・・。結局落ち込みから気分を引き上げるのは自分以外にないのだが、そこに至るまでに、やっぱりこれだけは必要だと実感している。

私の10以上の1つがベートベンの第9。
日本では年末に演奏される定番、うちに第9はたぶん5〜6枚あるが、NO.1は、ドイツの偉大なマエストロ、フルトヴェングラーが戦後バイロイト音楽祭で指揮し、ラジオ配信されたもの。日本人がクラシック名演アンケートで不動の一位にあげ続ける名演中の名演奏といっていい。今までうちにあったのはヒトラーの前で演奏されたもの、バイロイト祭での練習を録音したものだったが(EMIから出てたと思う)、2年前に実際ラジオ放送されたときの録音が日本人レーベルで発売。以来通勤の行き来に、仕事での帰りにとすり切れるくらい聴いている。



このフルトヴェングラー、観衆に区別はない(宗教でも政治でも)が信念で、そのためにナチスのプロパガンタに利用され、戦後は親ナチスだと弾劾され辛酸をなめ尽くした人だが、戦後初めて開催されたバイロイト音楽祭で、オールドイツ人の音楽奏者を率いてのこの演奏は、過ちを犯しすべてを失ったドイツ人に、同じドイツ人から勇気と希望のメーッセージを与えた素晴らしい、もう絶対コレを越える演奏は出てこないだろうというくらいの凄みすら感じる演奏だ。
弾劾された間何をしていたのか・・・落ち込みもしたろうけど、ただひたすら音を追求していたとしかいいようがない、細かに計算され尽くした指揮と、それに応えるオーケストラの音。ときには気合いが入りすぎてぎこちなく聞こえるときもあるがそれすら心揺さぶられる。当時のドイツ人がどんな気持ちでこれを聴いたのかと思うと第4楽章の入りのところでは涙すらでてくる。・・・フルトヴェングラー、力を出し尽くしたように、この演奏の2年後くらいにあっけなく亡くなっている。(確か国葬だったと思う)

ずっと聞き続けているといろんな発見があって楽しい。第1楽章は、嵐。風が吹きすさび雨がたたきつけるリズム
第2楽章は、馬がせっぱつまって走るリズム(まるで何かに追われているような)
第3楽章は、深い安堵と安寧、静寂。
そして有名な合唱つき第4楽章、シラーの詩、『友が遠くから私に会いに来てくれた・・・』。人と人、人と楽器の唱和、素晴らしい!につきる。


仕事でへこんだとき、人間関係でふさいだとき、勇気を与えてくれる価値ある音楽だと思う。



10以上の1つ、ニャンズ。レンズ舐めるんじゃない!



そして庭・・・。もさもさもののけガーデン。




あと諸々・・温泉とか旅行とか・・・話をじっと聴いてくれる誰かがいるっていうのも。