せっぺとべ

3年越しでやっと見ることが叶った、せっぺとべ。
鹿児島弁で精一杯飛べ。ちなみにひっとべは思い切って飛べ。日置市の日置八幡宮の御田植え神事だ。
この場合の飛ぶとは、土をこねる足踏み耕の意味と害虫を踏みつぶす意味があり、豊穣を祈願することを意味する。


長い竹竿の先にくくられたしべと団旗竿(看板竿ともいうらしい)。


しべは松の皮をそいだ物をくくり先を食紅で染めた物で、竿を通じて常緑樹の生命力を田んぼに伝えるという願いが込められているという。



しべ竿も団旗竿も絶対地面に触れてはならないらしく、移動するときは、男衆がひとりバランスを取りながら運ぶ。



周りにはそれを支える男衆、万が一の時に走って先を受け止める男衆、役割分担がちゃんと決まっているようだ。
そそりたつしべ竿。4つの集落毎にあるようで、男衆の誇りそのもの。


神社は小高い丘の上にあるので、次から次へと4つの集団が階段をのぼってくる。



女の子による奉納踊り、笹踊り。


大きな刀を脇にさしているのにきびきびとした動き、そしてめちゃくちゃ可愛い。


鹿児島独特と言われる棒踊り。まんなかは虚無僧だそうだ。



鹿児島ではイケメンのことをよかにせどんというが、いやあ凛々しくて、おばしゃんがもちっと若かったら、惚れるぜ!


こちらは鎌踊り。長い枝の鎌をもった子と短い柄の鎌をもった子が、かっちゃんかっちゃん鎌をつきあわせてスピーディに踊る。



驚いたのは、そのスピードもさることながら、身体感覚というか身体バランスとでもいうか・・・・。境内に入り、神殿の一段下、神殿前、時計回りに神殿右横、後ろ、そしてまた神殿左横と、踊っていくのだが、そのたびごとに場所の広さが違うのに、誰に言われるまでもなく、前後左右の身体空間を即座につかむ子ども達。大きな刀を差したり、相手と打ち合うのに、絶対ぶつかったり、それによって動きが鈍ったりしないのだ。
古来、薩摩兵は強かった。九州では負けなし。朝鮮の役では、鬼石曼子(グイシーマンズ)と呼ばれ、関ヶ原では島津の退き口と呼ばれる敵中突破をはたし、江戸時代のあいだ、幕末まで、中央から恐れをもって語られた。
その強さは、集団としての強さであり、その強さを支えたのはこの身体センスが根っこにあったからではなかろうかとしみじみ思った。すごいものを見た。
ビデオに撮ったのでなんとかアップを試みるが、やり方を忘れ悪戦苦闘。これはそのうちどうしてもアップしたい・・・・。


焼酎をこんな入れ物でぐい飲みするのは、やっぱり鹿児島でしか見れない。


祭りはクライマックス、いよいよ神社下の田んぼへと神様が遷座する。
先頭は御輿に先駆けて大王殿(デオードン)。


どう見たって日本人離れしているが、祭りの全てを見守る。大隅の弥五郎どん、甑島のとしどんそれぞれ違う神様のようだ。
神田へと向かう御輿。


ここから男衆のメインイベント。広い田んぼの中を端から端まで、しべ竿と団旗竿を掲げながら運ばねばならない。


やんややんやの歓声と、


竿が傾くたびに観衆からは悲鳴


足場はぐちょぐちょでおまけに酔っ払っていて足元はさらに怪しいので、一挙に運べるはずもなく、なんども田んぼにしべ先が落ちそうになりながら必死に運ぶ。どんなに焼酎を飲んでいようと、運びきるのが男衆の矜持だ。

渡り終えると、輪になってせっぺとべの唄をうたいながら飛び跳ねる。


歌詞は全然わからなかったが、とにかく楽しそうでこちらまで口元がゆるみっぱなし。


やり終えて満足顔の男衆。いい表情だ。


鹿児島の祭り、あと1つどうしても見たいのが十五夜神事。日本の祭りのいろんなもののルーツがこの祭りにあると睨んでいる。絶対そのうちいくぞう!!!